那須ワイン 渡邊葡萄園醸造 栃木県那須塩原市

〜孤高のサムライが、ボルドーの流技で極める、純日本ワインの頂(いただき)〜

渡邊葡萄園醸造 代表者 渡邊嘉也氏(わたなべよしなり)

住所 栃木県那須塩原市共墾社1-9-8

創業年 1884年

年間生産量 約1万7000本

自社畑 約4ヘクタール(葡萄畑) 水田や畑、休耕地を含めると自社農地は約10ヘクタール。森林も含めると所有地20ヘクタール。

那須ワイン入口看板那須ワインの建物那須ワイン入口表札

【左】入り口看板  【中】那須ワイナリー・建物  【右】ワイナリー入り口プレート

那須ワインショップ店内那須ワイン広い自社畑那須ワイン低い垣根仕立て

【左】醸造所内・ワイン売り場  【中】とても広い自社畑  【右】垣根の高さ渡辺氏の背丈の半分

那須ワイン自社畑メルロ垣根那須ワイン自社畑メルロ房那須ワイン自社畑マスカットベーリーA棚

【左】メルロの自社垣根畑  【中】自社メルロ種葡萄の房  【右】マスカットベリーAの自社棚畑

 

 「シャトーピションラランドとシャトーヴァランドローで修行した若旦那が、日本に帰ってきてやっているワイナリーがあるんだよ」と、2005年の春頃、箱根のホテルに転勤してきたばかりのソムリエさんから教えられ、にわかに信じられませんでした。そりゃそうです、修行先の2つのワイナリーがあまりにもボルドーの超ビックネーム(有名な高級ワイナリー)なのに、日本ワイン関連の本にもネット上でも目にすることが無かったからです(当時は)。そのソムリエさんは言いました「僕が、箱根に転勤してくる前のホテルがそのワイナリーの近くにあって、仕入れて売ってました。栃木県の那須にあります」と・・・・・。

 早速、個人的に取り寄せて飲んでみました那須ワイン。若くて、しっかり閉じたメルロ・カベルネソービニヨンや、酸とミネラル感がキリリと効いたシャルドネ、今まで飲んだことがないほど豊潤でコクがある超完熟の辛口ナイヤガラや辛口甲州(現在、甲州ワインは委託醸造分などで、ほぼ自社販売していません。)など、閉じていたり、開きぎみであったり、しっかり“身”が入っているのに一筋縄ではいかないワイン達。品行方正に整えられた薄っぺらな、既存の日本ワイナリー(当時の)のつまらない造りとはあきらかに違うと感じました。なにやら器の大きいモノを生み出そうとして“おり合い”がついていないように感じましたが、個性的なワイン造りを独力で実践されている生産者様の意志が飲んだワインから伝わり、胸が高鳴りました。日本に帰国されて2〜3造りのワイン、自園畑葡萄の樹齢も2〜3年、気候や地力も違うボルドーと日本の葡萄では勝手が違うのも当然、もう少し様子をみようと思いました。特に芯のある赤ワインは、果実味優先のはや飲みタイプではなく、古典的な上級ボルドーを彷彿とさせるガルド(長期間の瓶熟成を経て楽しめるようになる)な本格硬派タイプ。閉じていたり、芯のあるワインは中身が入っている証拠で、うすっぺらなワインではあり得ません。これが熟成よって、どのように飲み頃へと大きく成長するのか楽しみに待つことに。(現在は、熟成方法や熟成期間を慎重に見極めているため、ここまで閉じた状態ではありません)

 3年間待って、セラーに大切に仕舞っておいたメルロワインと、新たにリリースされていたマスカットベリーAの2005年ものを買い足して、2008年に飲んでみました。硬さのとれたメルロワインは、緻密かつ、きめ細やかな渋味で、精緻に洗練され、ボルドー的でもあり和的にも感じられるエレガンスさを身にまとっていました。素晴らしい!はや飲みではない熟成されたボルドー古酒の良さを楽しめる玄人向きです。また、メルロやカベルネにくらべて早めに飲み頃になる、ボルドー的に造られた日本の葡萄品種マスカットベリーAワインは独創的で、立体に階層を重ねたような重層的な奥行きをボディに感じさせます。老木葡萄の超遅摘み収穫と、ボルドー樽による熟成のなせる効果でしょうか。一般的には、ベリーAのワインを、ボジョレー(ガメイ種葡萄)やピノノワール種葡萄のワインにたとえたりしますが、那須ワインのマスカットベリーAを表現するのには、しっくりきません。考え続けたあげく自分的に一番合点がいったたとえが、上質な“ロワールのカベルネフラン種葡萄”的ワイン。冷涼な那須の気候でボルドー的に造られた那須ワインマスカットベリーAは、フランスでも北の産地、ロワール地方のカベルネフラン種葡萄を使用するワインに、味わいが似ていると感じたのです。先代社長のお父様の代から植えられていた樹齢の古い老木から収穫される、超遅摘み自社畑マスカットベリーA葡萄は、ボルドーの超一流セラーマイスターの職人技によって、カベルネフラン的な密度のあるボディと味わいにまで引き上げられているように感じます(ヴィンテージにより差はありますが、樹齢の高さと、遅摘みと、樽熟成により、ベリーA特有のイチゴ香的でグレープジュース的なフォキシーフレーパーも抑えられる傾向にあるようです)。熟成ワインの素晴らしさを体験した熱の冷めやらぬうちに、正式に見学を申し込む電話をすると、そのまま一時間以上、熱いワイン談議になりました。

 後日、早々にワイナリーを訪れてみて驚きました。その自社畑の広さに。ワイナリーとは街道で分断されているとはいえ、道路をひとつだけへだてて、ひとまとまりにある自社畑は、まさに“農園”で、「渡邉“葡萄園”醸造」の名に恥じぬ、大変りっぱな規模です。まわりが市街地化してきているなかでの農地なので、広さがより際立ちます。隣接するDIYホームセンターや那須塩原市役所をあわせた広さのさらに倍ほどの自社農地は、はるか遠くまで続き、確実に“1丁目分”または“ひと町内会分”ぐらいある感じです。関東圏内に、これだけ壮大なひとまとまりの自社農地を所有維持する個人ワイナリーがあろうとは・・・感動的!一見の価値ありです。ただし現在、農園は葡萄畑だけではなく、水田や畑、休耕地が含まれています。ボルドーで10年近く修行し(1993年渡仏〜2002年帰国)、先代の後を継いだ四代目の現当主渡邉嘉也氏いわく、この自社農地をすべてボルドー品種の葡萄畑にするのが夢であるとのことです。現在もその夢に向かって着実に増殖中のカベルネソービニヨンとメルロの垣根仕立ての葡萄畑は、まさに特級ワイン(グランヴァン)を生み出すことを前提に植え付けられた見事なモノ。他の日本のワイナリーさんの畑では見たことが無いほどの超密植。一本ずつの木の間隔も狭い上に、垣根と垣根の間も通行しづらいほど狭い。狭い面積で競合しあう葡萄樹は、力強く鍛えられ根を地中深くに伸ばし、しっかりと根付いて土中深くのミネラル等を運ぶようになります。樹勢も抑えられ、樹高は低く人の背の半分ぐらい(上載の渡邉氏が小さく写る画像を参照)、幹も細く、葉も小さく、葡萄の実も小粒に締まっています。私が「葡萄の実がとても小粒で良い感じですね。」と話すと、渡辺氏は「樹齢が若いからですよ。」と返答していましたが、安価なワインを産出するAOCボルドークラスやクリュブルジョワクラスの畑でなく、グランヴァンクラス(特級ワイン)仕様のお金と手間がかかる植え方であるとは、はっきりおっしゃっていました。密植により葡萄の木が多いということは、苗木代金が多くかかる上に、当然ケアする木の本数が多くなるということです。そのようにして植えられた樹一本あたりに実らせる葡萄房は、基本6房のみという少なさ!まさに、贅を尽くした特級畑仕様といえます。植えた葡萄の苗木も素性の良いもので、ボルドーから厳選してとりよせたクローン。畑の土もボルドーに送って分析してもらい、おおむね良好だったとのこと(もともとは、開墾した荒地。火山灰土が中心で、石、砂利も多く、平地とはいえ水はけが良い土壌)。気候の冷涼感もボルドーとくらべて問題無し。盤石の態勢で臨む葡萄栽培ではありますが、唯一にして最大の敵、日本であることの宿命である雨量の多さには悩まされるとのこと。

 つねに、長年のボルドー修行時代の経験や人脈から得たものを駆使し、ボルドー=世界トップ水準でのワイン造りに挑む渡邉氏は、日本ワインという枠の外で孤軍研鑽し、那須の風土性を反映したボルドー流のワインを極めんと、微塵もぶれることなく邁進されているように強く感じました。渡邉氏、一流の経験則と哲学から生み出されるワインは、独自の方向性がある唯一無二のスタイルを構築しつつ進化して、現在素晴らしいモノとなっています。ぜひ、那須のワインを、折にふれて味わってみてください。

 

 渡邉嘉也氏は、1993年、26歳の時に渡仏し、ボルドー大学へ入学。1997年にはシャトーピションコンテスドラランドに入社。その後もサンテミリオンのシャトーヴァランドローの醸造スタッフや、ピション・ラランドが運営するシャトー・ベルナドットの立ち上げに参加された経歴をもっています。ボルドーでの10年近くにわたる長期の修行のなかでも、二人の偉大な師匠がいるとおっしゃっていました。シャトーピションラランドの技術部門の責任者トーマ・ド・シ・ナム氏には、伝統的な醸造の真髄を、シャトードヴァランドローのジャン・リュック・テュヌヴァン氏には、世界中が注目する最新醸造の核心を学んだ、ということです。

 

◆修行先のワイナリー◆※ワインファンの方なら知っていると思いますが、日本ワインだけのファンの方が読まれるといけないので書いておきます。

『シャトー・ピション・コンテス・ド・ラランド』・・・・・フランス・ボルドー地方メドック地区のポイヤック村にある特級(グランクリュ)クラスの格付け特2級シャトー。特2級の中でも特1級シャトー(有名なシャトーラフィットロートシルト、シャトーラトゥール、シャトームートンロートシルト、シャトーマルゴー、シャトーオーブリオン)と肉薄するほど人気実力のあるスーパーセカンドと評価されています。1本1万円〜2万円ほどします。

『シャトーヴァランドロー』・・・・・フランス・ボルドー地方サンテミリオン地区のトップワイナリーのひとつで、生産量は極めて少ない。ワインは1991年が初リリースの新生ワイナリーでありながら、またたくまに大成功をおさめ、いっとき発売したての新ヴィンテージのうちから1本10万円以上の価格がつけられ、その急激な成功により「シンデレラワイン」と賞賛されました。新興の高級な少量生産ワイン(ガレージワイン)の代表格として、現在でも1本約3万円前後しています。古い格付け体質のボルドーワイン界に風穴を開け、旋風を巻き起こしたワインです。

『シャトーベルナドット』・・・・・上記のシャトーピションコンテスドラランドが2006年から所有経営するボルドー、AOCオーメドック・クリュブルジョワ級のプティシャトー。シャトーのあるフランス・ボルドー・メドック北部のサン・ソヴール村はポイヤックに隣接しており、僅か数キロ先にピション・ラランドがあります。スウェーデン王室御用達となり、「プティコンテス」の愛称で呼ばれています。

 

◆渡邊農園の歴史◆

 広大な那須山麓のふもと・・・百二十年の歴史を持つ国内でも数少ないぶどう園をもつワイナリーです。NASU WINE(渡邊葡萄園醸造)は、1884年(明治17年)現在の西那須野町遅沢に下野葡萄酒株式会社を起こし創業を始めましたが、黒磯地区の開墾が始まると共に地を政府の指導のもと千百町歩の開墾を進めていましたが、百町歩を残し千町歩は開墾になったものを政府に返還、その後、そこに毛利侯の開拓が入り毛利農場と呼ばれるものが出来ました。その百町歩の開拓地にぶどうを植え、1903年(明治36年)に西那須野より現在地・黒磯地区共墾社に移り以来・・・・1本1本、手造りでのワイン醸造が今日まで続いています。新たに、2003年から、フランス産醸造品種ぶどうを植え始め、世界レベルでのワイン品質・技術向上を目指しています。

 

 渡邊農園は、1882年(明治15年)、初代(謙次)が現在の地を開拓しました。畑作が主体で家畜等を飼い、1884年(明治17年)にワイン醸造所を設立し、東京方面へ出荷するようになり、1903年(明治36年)現在の場所に醸造所を移転し、水稲・酪農・ワイン部門とにより運営しています。

 

 渡邉葡萄園醸造は、1882年(明治15年)の設立当初より日本原産のブドウ品種である「甲州」や「赤ワイン用ブドウ品種として人気の高い「マスカット・ベリーA」などのワインを醸造しております。2002年からは現在の醸造責任者・渡邉嘉也によって、新たにボルドー品種の栽培を始めました。そしてヨーロッパのワイナリーの概念を那須の地に実現させるという理念にもとづき、フランスの醸造技術を取り入れたワイン造りに挑戦しております。私どもの畑では、葡萄の木一本一本から実の一粒一粒まで、責任をもって丹念に手を入れ育てております。そして、成熟の度合いを見計らい一番良い時期に摘み取り、仕込みを行っております。そうして那須の地で育まれたワインは、独自の味わいを持った個性あるワインに仕上がります。弊社のワインをご利用いただくお客様には、大きなワインメーカーでは決して造る事の出来ない、この地ならではの特徴を生かした美味しい一品を自信を持ってご提供させていただきます。「那須ワイン様のパンフレットより」
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店長 今井 博

■プロフィール■

・1988年より酒販売に従事する。

・1990年 第40期サントリーソムリエスクール卒業

・利き酒師「SSI日本酒サービス研究会・酒匠研究会認定」

・フランスワイン・コンセイエ「SOPEXAソペクサ・フランス食品振興会認定」